ケーススタディ

メンタルヘルスの観点からみた健康経営

 

「健康経営銘柄」に次いで「健康経営優良法人(ホワイト500)」認定制度などが増え、健康経営に対し取り組む企業はますます増えていくことと考えられます。今回は健康経営実現の課題である、従業員のメンタルヘルスについて話していきたいと思います。

|メンタルヘルス問題

メンタルヘルスとは、「心の健康」のことであり、昨今、このメンタルヘルスに問題を抱える人々が増えつつあります。労働環境の変化などによるストレスが、「心の健康」に悪影響を及ぼしたことが要因と考えられています。

ストレスを感じている労働者のうち、その原因は仕事の量や質、対人関係、仕事の失敗、責務の発生等が多く、その後の業務に影響を与える原因にもなりえます。その後、結果としてさらなるストレスを抱えるような悪循環を繰り返すこともあります。

|メンタルヘルス問題による企業へのリスク

このようなメンタルヘルス問題は企業に対しても大きな影響を与えるおそれがあります。

業務パフォーマンスの低下

メンタルヘルス不調は睡眠障害や疲労感、倦怠感などの身体的症状もあり、個人の業務パフォーマンスの低下につながります。

メンタルヘルス不調が原因での離職

平成 27 年 11 月1日から平成 28 年 10 月 31 日までの期間では過度に精神的ストレスを受け、うつ病や不安障害などメンタルヘルス不調により 連続1か月以上休業した労働者の割合は0.4%、退職した労働者の割合は 0.2%と欠勤や長期休職、中には退職する労働者もでています。(厚生労働省「平成28年度労働安全衛生調査(実態調査)」より過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者割合)

|企業の行うメンタルヘルス対策

2015年12月から、ストレスチェックの義務化が始まり、あちこちの企業でメンタルヘルス対策に取り組む動きがみられています。平成28年度では全体の56.6%もの企業がメンタルヘルス対策に取り組んでいる状況です。(厚生労働省「平成28年度労働安全衛生調査(実態調査)」よりメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所割合の推移)

実際に取り組んでいるメンタルヘルス対策としては、先ほど挙げたストレスチェックが

全体の62.3%。次いでメンタルヘルス対策に関する労働者への教育研修・情報提供が38.2%と労働者への研修などを通した意識付けを行う企業も増えています。(厚生労働省「平成28年度労働安全衛生調査(実態調査)」よりメンタルヘルス対策の取組内容(複数回答)(平成 28 年))

またメンタルヘルス対策の実務を行う担当者を作り、メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備や、職場を離脱してしまった労働者への復帰支援を行う企業もあります。

次に、実際に企業で行われたメンタルヘルス対策の事例をいくつか紹介していきます。

|事例その1:日産自動車株式会社

日産自動車株式会社では、年1回のストレスチェックに加え、その結果の活用や外部EAP機関による相談カウンセリングなど、様々なメンタルヘルス対策に取り組んでいます。

外部EAP(従業員支援プログラム)機関の活用

同社ではまず、メンタルヘルス対策についての専門的な知識を利用すべく、外部EAP機関を活用し、相談カウンセリングを行います。

職場復帰支援への取り組み

また、2006年4月から休職している従業員の職場復帰を促す、「職場復帰支援プログラム」を運用しています。目標は職場復帰後だけでなく、その後の再発防止に設定しており、当人が8時間勤務できる状態まで回復してから、復職判定面談は、本人、上司、産業医、人事がそろった上で行われ判断することとなっており、丁寧に職場復帰支援に取り組んでいます。

リワーク施設の開設

その後2008年には職場復帰の前に社外のリワーク施設を積極的に活用することとし、2011年1月の就業規則改訂時には、休業期間が1年以上経過した者などといった項目に該当する休業者にはリワーク施設を推奨するといった取り組みを行っています。さらに同社は、職場復帰のためのリワーク施設の重要性を重視し、2014年4月に社内リワーク施設「森の里 ワークトレーニングハウス」を開設しました。

|事例その2:株式会社ミライト

株式会社ミライトではストレスチェック制度の実施後の活用を重点的に取り組んでいます。

ストレスチェック制度の取り組み

同社では、ストレスチェックが義務化される前に、厚生労働省から示されたストレスチェック制度のマニュアルに沿って、試行実施を行い、その結果データをより細かく分析するべく、外部委託機関のストレスチェック項目や結果シートを比較検討したうえで、設問数を増やし、より詳しいストレス要因の解析を行いました。

相談窓口の開設や、職場改善研修の実施

ストレスチェック実施後、その後の適切な指導につなぐべく、相談窓口の開設を行い、また会社全体で管理職などに対する職場環境改善研修取り組んでいます。この職場環境改善研修はグループワーク形式の参加型で行うことで、より活発な参加者の意見交換の場とし、その後研修結果を持ち帰り職場で展開することで、従業員全員でのメンタルヘルス対策に取り組める環境づくりを行っています。

|健康経営課題の一つ「メンタルヘルス対策」

こうしたメンタルヘルス対策は、職場環境改善の一歩となり、メンタルヘルス問題による企業へのリスクの軽減や、企業全体の生産性向上につながると考えています。

ですが、こうした取り組みがあっても、まだまだ仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合は半数を超えています。(平成28年では職場で強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄があると回答した割合は59.5%(厚生労働省「平成28年度労働安全衛生調査(実態調査)」より仕事や職業生活に関する強いストレスの有無及び内容別労働者割合))

 

 

 

職場におけるメンタルヘルス対策はまだ動き出したばかりで、依然としてストレスを感じる労働者の数は減少には向いません。その原因を根本的に解決するのは非常に困難ではありますが、これからも多くの企業が生産性向上を目指し、健康経営や働き方改革を率先して取り組んでいくことと思います。

そのためには従業員の健康状況をしっかりと理解し、ケアしていくことが重要であり、優先すべきことだと考えます。

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