健康経営・働き方改革を推進する企業インタビュー

【事例で学ぶ働き方改革・健康経営】向洋電機土木株式会社 ~会社利益へつなげるための働き方改革~

働き方改革・健康経営は、最終的に会社の利益に反映されるものでなくては本質的な取り組みにはなりません。

どうしたら会社の利益、生産性の向上につながる働き方改革ができるのか。

今回は建築業界では珍しい、社内でテレワークシステムを導入している向洋電機土木株式会社に、健康経営・働き方改革のきっかけと取り組み事例についてお話をうかがいました。

企業プロフィール

【向洋電機土木株式会社】

神奈川県横浜市南区井土ヶ谷下町 16-6

昭和 40 年設立

従業員数:37 名(うち女性 10 名)

工事現場の施工管理を請け負う会社。社内での高い資格取得率と他社に負けない技術力が強み。

経済産業省「健康経営優良法人 2018(中小規模法人部門)」、横浜市「よこはまグッドバランス賞」通算 7 回認定、「横浜健康経営認証」クラスAAA認定、総務省「平成 28 年度 テレワーク先駆者 100 選」など、健康経営・働き方改革に関連する様々な取り組みが表彰されている。

ホームページ URL:http://www.kouyo-dd.jp/index.html

CHO 横澤 昌典氏


|父親、娘、自身のトリプルケアの経験から、社内のシステム化に着手

 

―――御社は総務省の「テレワーク先駆者百選」に選定され、社員のテレワークをいち早く取り入れているとお聞きしました。業界に先駆けて働き方改革、健康経営に取り組み始めたきっかけについてお聞かせください。

当社の働き方改革、健康経営の推進は、平成19年から取り組んでいるのですが、今のように取り組み始めたきっかけは、私自身の経験でした。

当時、私の父親は末期がんで介護が必要な状況でした。また、私には小学生の娘がいたので、娘の育児もあって仕事をしながらダブルケアをしていました。さらに、私自身がちょっと特殊な病気にかかってしまい、闘病をしなくてはいけなくなり、トリプルケアになりました。介護、育児と並行して、自分の病気と向き合いながら、働かなくてはいけなくなってしまったのです。

こうした経験から、従業員が給与を確保した状態で、きちんと働いていくために、会社側は何をしなくてはいけないかを真剣に考えるようになりました。

当社ではこれまでも介護、育児を並行する社員への配慮を行っていましたが、ざっくりとした制度だったため、より働きやすい環境づくりのため、社内でのシステム化を開始しました。

―――横澤さんご本人の経験から、本格的に取り組み始めたのですね。

はい。その結果、私以外にもそういった問題を抱えていた社員が発覚しました。

取り組みの一つとして、平成29年4月から人間ドックや婦人科検診を社員が会社負担で受診できるようにしたのですが、検診がきっかけで乳がんが発覚した女性社員がいました。

本人もひょっとしたらと思っていたそうなのですが、自腹で検査に行く気にはなれなかったということでした。しかし、会社が受診の機会を設けたことによって、実際に病気が見つかり、今は治療で休業しています。

新たな検診の導入によって病気の早期発見につながり、会社にとっては病気が原因での退職を未然に防ぎ、雇用を維持できたということ。従業員にとっては自分の働き口、生活が維持できたということで、双方にとってプラスになりました。

しかし、単純に休業してしまうと休業補償給付だけでは生活を維持することも難しくなります。

なので、休業ではなく仕事を続ける方法はないかと考え、テレワークの導入につながりました。

 

|建築業界でのテレワークの活用方法とは?

―――現場での作業が多い御社のような業種では、テレワークの導入は難しいように感じましたが、実際にはどのように導入されているのですか?

当社ではその人の状況によって働くパターンを選べるようにしています。

私が入院していた時の場合ですと、体が動かなかったわけではありませんでしたし、意識が朦朧としていたわけでもありませんでした。例えば、骨折をしている人でもパソコンなどの作業はできますよね? そういった人たちが休業ではなく、仕事を続けるための選択肢をいくつか用意してあげることが会社の責任だと考えました。

そのためにまず、どんな環境でも仕事ができるように社内のインフラ整備を行いました。

具体的には、従業員に支給している携帯をすべてガラケーからスマホに変えました。また、社内で使っている PC をデスクトップからノートに切り替え、リモートで仕事ができる環境を作りました。

そして、介護をしていることを会社へ届け出ている従業員は、こまごまとした用事を済ませるため1時間程度なら手続きなしの外出を可能としました。さらに、「積み立て休暇」というものを導入しました。「積み立て休暇」は、従業員が、使わなかった年次有給休暇を最大30日間、積み立てることができる制度で、傷病、ボランティア、子供の看病、家族の介護などでの利用に役立てることができます。

このほかにも、従業員の 7 割以上は現場に行って仕事をすることが多いため、以前は現場先からの直帰を認めず、会社に戻らなければいけない規則がありましたが、現在は、会社に戻らずそのまま現場事務所もしくは自宅で仕事を続けてもいいことにしています。

―――現場で活動する従業員に合わせた活用法ですね。ここまでの取り組みで、どのような変化がありましたか?

従業員にとっては、例えばいままで移動時間が 2 時間あったところが、短くなった分、体が楽になり作業効率が上がりました。会社としては、ガソリン代の支出が減り、また移動が少なくなったことで社員の事故の危険性が下がり、保険料も安くなりました。

 

 |浮いたコストで講習会!会社の利益に大きな変化

 

―――どの取り組みも、会社としては先行投資が必要ですが、結果として会社のメリットにうまくつながっていますね。

そもそも、これらの取り組みは会社の経営戦略として行っています。従業員にとってより働きやすい環境づくりをすることで、利益を上げることが目的です。そのために、当社では取り組みで浮いたガソリン代、残業代などの資本を従業員の教育に投資しています。

当社の強みは、中小企業だけれどもほかに負けない技術力にあります。技術力がなぜ高くなったかというと、こうして従業員教育に力を入れてきたからです。

従業員教育の例ですと、当社では資格取得推進のための講習会を月 2~3 回開いています。資格の受験料も会社で負担し、取得のためのテキストを作成し提供も行っています。

そうして毎年様々な資格の合格者を輩出しています。

資格取得者が増えると受注できる仕事の件数も増えるので、その分、会社の利益につながっています。

このようにガソリン代、残業代など働き方改革で浮いたコストを毎回きちんと算出し、見える化して、その分を教育投資にあてる仕組みをつくっているのです。

―――会社の利益につながるすごくいい循環ができていますね。取り組むうえで難しい点、課題などはありましたか?

健康面に問題が少ない若い社員などは、取り組みに対してあまり興味がないことが多く、社内全体でも最初はあまり積極的ではないことが難しい点でしたね。世代や個人によって受け取り方が違う状態で、働き方改革に関する情報を一斉に社内に発信したとしても、一人ひとりにうまく刺さらないことを痛感しました。

そのため現在は、改革担当者である私が個別に面談して、キャリアプラン、ライフプランをヒアリングしながら、それぞれの状況に応じてプラスになることを説明しています。

 

―――最後に横澤さんにとっての働き方改革・健康経営について一言お願いいたします。

当社では、働き方改革、従業員の健康づくりに関連した健康経営を経営戦略の一部として位置づけております。神奈川県が行っている健康経営に積極的な事業所の登録制度である、「CHO 構想推進事業所」に平成 29 年に当社も登録されました。

オフィス内の様子。観葉植物などを配置して緑が視界に入るようにしている。

私が就いている CHO という役職は最高人事責任者という役割のほかに 2 つの意味があります。

1 つは Chief Health Officer(健康管理最高責任者)です。従業員全員の健康管理のため、本人、家族を含めた健康について、肉体面、精神面のカウンセリングをすべて個別で担当しています。

もう1つは Chief Happiness Officer(幸福追求責任者)として、社員一人ひとりの幸福を追求し続ける CHO を目指しています。

―――向洋電機土木株式会社 CHO 横澤様 ありがとうございました。

今回おうかがいした向洋電機土木株式会社では、従業員の高い資格取得率や、独自で行っている教育の成果もあり、施工を担当した多くの現場で優良工事施工会社・技術者として表彰されています。

従業員のために何ができるか、それが結果的に会社の利益にどうつながるのか。

自社の状態を的確に把握して、先を見越した取り組みの数々が、働き方改革・健康経営を成功させる大きな要因であると改めて感じさせるお話でした。

 

 

(構成・文 健康経営のミカタ WEB 編集長 池田 駿)

関連記事

  1. 健康経営・働き方改革を推進する企業インタビュー

    【働き方改革インタビュー】株式会社ブリリアントマザー ~本当の女性活躍推進とは~…
  2. 健康経営・働き方改革を推進する企業インタビュー

    【事例で学ぶ働き方改革】アクロクエストテクノロジー株式会社 ~社員がいきいきと働…
  3. 健康経営/働き方改革

    「やめる」ことから始める働き方改革8選
  4. 健康推進コラム

    東京は街全体がジム?!
  5. 健康経営・働き方改革を推進する企業インタビュー

    事例で学ぶ健康経営 Vol.1 株式会社ファナティック 〜クラウド型健康ランチシ…
PAGE TOP